2014年 08月 18日
朝鮮戦争1950−1953 The Forgotten War と刻まれています。 何だかとてもリアルな像で、泥に浸かったような軍服が重そうで、もうこれだけで戦争のつらさが伝わってきます。そう、忘れられた戦争、です。 じつはこれを見た瞬間、1937年に中支(中部支那)の前線に従軍した父が、揚子江の支流の泥の河にもぐり、藁1本で呼吸しながら対岸に渡ったときの姿を思い浮かべたのでした。 けっこうお喋りなおじさんで、朝鮮戦争の戦火の中を貨物船の船底にひそんで、ここまでついたのだと言います。 「家は朝鮮の北の方の農民だった。ただ死にたくない一心で逃げて、そうだよ、逃げたのはひとり。若かったからね。ついたところがアメリカだから、もう帰ることもできないよ。それ以来、家族とは生き別れ、親兄弟が生きているのか死んだものかさえもわからないままよ。でも、私はこうして生きているのだから幸せだね!」 アメリカに行く船ということだけは乗る前に聞いていたけれど、アメリカが地球上のいったいどこにあるかさえ、よくわからなかったそうだ。 私は話を聞きながら、多分、母国でほとんど学校に行ってなさそうなその人が、こうしてハンドルを握り、当然ながら永住権もとり、早口の英語で明るいお喋りを楽しめるようになるまでに、どれだけの苦労をしただろうと思いました。 わたしは大人になってだいぶたつまで朝鮮戦争のことをよく知りませんでした。これがどんなにすさまじい戦争であったか、どんなに理不尽な戦争であったか。 日清戦争も日露戦争も、朝鮮が欲しくてたまらない日本の財閥や、朝鮮支配を出世の階段としたい政治家やら官僚やらの支配層が、他国の関係にいちゃもんつけて起こした戦争であり、朝鮮を戦場として多大な犠牲者を出した。そして日韓併合。36年間の日本の植民地支配。 日清日露のいきさつは、角田房子著 『閔妃暗殺』 に詳しいので、とてもおもしろいノンフィクションですが、日韓関係史の暗部を知るのにおすすめします。 朝鮮は、日本の帝国主義侵略の犠牲者であり、太平洋戦争の戦勝国であるはずなのに、日本の敗戦と同時に、連合国の合意によって、国を資本主義陣営と社会主義陣営に分断されてしまいます。その後はこんどは冷戦の代替地として戦火にさらされます。ずっと踏んだりけったリです。 フラッシングの図書館で、以前に朝鮮半島の現代史記録映画のDVDを借りたことがあります。それは、朝鮮半島の民衆運動史であり、それは抗日運動史であり、それをみると抗日の組織は網の目のように朝鮮半島全体に行きわたっていたということがわかります。北からの革命軍と同時に、アメリカ軍に抵抗する抗日運動で育った民族解放軍がいて、これはまったくベトナム戦争とおなじ構図です。もしアメリカが介入していなかったら、朝鮮はベトナムのような社会主義国になっていたはずです。 しかし、日本が朝鮮半島を植民地にしていなければ、抗日運動という抵抗の歴史はなかったわけで、それがなかったら、北朝鮮も生まれてなかったかもしれません。 そして、日本が中国を侵略していなかったら、中国は社会主義革命をやったかどうかと思います。抗日運動という草の根の下地があってこそ革命戦線を張ることができたように思うからです。だからこれらの国のふたりの独裁者(毛沢東と金日成)を生んだのは、帝国主義日本の侵略だったのかもしれません。 それにしても、隣の国だというのに、私たちはまだまだ知らないことが多すぎます。
by keiorihara
| 2014-08-18 13:35
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