折原恵のニューヨーク写真日記 - New York Photo Diary by Kei Orihara

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2015年 01月 23日

不自由な日本語 5 ー You と あなた

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Green Point, Brooklyn


<不自由な日本語 5>

英語の<you>はとても便利なことばだ。
ふしぎなことに、日本語の「あなた」という言葉は、優しい音色をもっているのに年上の人にたいして使えない。

目上のひとで相手をなんと呼ぶかわからないときに、つまり名前で呼ぶか役職、役割名で呼ぶかなど戸惑うときに、「あなた」が使えたらどんなに便利かと思う。
あるいは、話しながら相手の名前を思い出せないときも、とても困る。
同等と目下の相手には、あなた、あんた、君、お前、貴様、てめえ、、、といろいろあるのに、目上の人を呼ぶ代名詞はない。

日本語には < I >と < You >という人称代名詞がない。
どこにいても、誰と話しても、”個人としてのわたし”である<I > 、そして、どこにいても誰と話しても、”相手としてのあなた”である<You>という、とても便利な代名詞がない。

英語の I やYouは、それは代名詞なのでいつでも一つ。
たった一つであるがゆえに I とYouはいつでも対等である。少なくとも、言語の上ではまったく対等だ。
どんな相手であれ、どんな場であれ、I とYouで会話ができる。
相手が何者であろうが、どんな年齢の人であろうが、どういう関係であろうが、「わたし」やら「あたし」やら「ぼく」やら「おれ」が語るときはいつでも<I>であり、話す<相手>はいつでも<You>である。

日本語ではふつう、よほど許し合う関係でないかぎり、年上の人に”あなたは、、、”というふうに言えない。
しかし反対に、親しみがなく、ごく公的な社会関係のとき(たとえば裁判とか、議会とか)には使えるし、という複雑さもある。
親は親しい間柄であるが、子どもは親にやはり”あなた”とはいえない。
(もちろん意識的に家族関係をつくろうとして、別の言葉のルールを作っている家族もいるので、それは除外して、これから語っていくのはごく一般的な場合である)
”あなた”の代わりに、役割や職業上の役職名や個人名をいちいち入れなければならない。
お母さんは、、とか、おじさんは、、とか、社長は、、とか、村上さんは、、とか。
この関係で”あなた”を使うときは、けんか腰で相手をとがめるとき、だったりする。
だから、役割名や個人名がわからないときは、ほんとうに困る。
”お宅”という言葉はあるが、やはりまた、目上の人に使うのはなかなか難しい。

とくに子どもの年齢だと、あらゆることが難しい。
例えば、大人の女性と子どものあなたが会話している場面。
「誰と一緒に行きたいの?」あるいは「誰のことを話してるの?」何でもいい、そう聞かれて、Youと答えれれば簡単だけど、日本人の子どもは困ってしまう。
子どものあなたは、相手の女性の名前を知らない。所属もよくわからない。
おばさん、というには、そんなタイプじゃないし、しっくりこない。お姉さん、というには歳がいっている感じで、ちょっとちがう。
しかし、あなた、という言葉は子どもの辞書にはない。
Youのような便利な言葉がないのだ。
そこで、子どもはどうしようかと、口をつぐんでしまう。または、この人、と指差しをする、、、まるで幼児のような態度である。
日本の子どもや青少年がみな子どもっぽく見えるのは、こんなことばの問題もあるように思う。
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by keiorihara | 2015-01-23 17:51 | 日本語と英語 | Comments(0)


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