2015年 02月 06日
日本でも、不気味な時代が始まろうとしている。 日本語の探究も急がねばならない。 さて、<不自由な日本語 6 > 日本語には< I >とか< You > とかの人称代名詞がないという話を前に書いたけれども、きょうは最も基本的な、動詞の話をしたいと思う。 これは、英語をまともに学んだ人には、かなりバカバカしい話かもしれない。 しかし、英語がまともにできない状態で、とつぜん日常が英語という世界に入って、ああ、英語とはそういうものなのだと、知識ではなく実感をもってわかった英語の話のひとつである。 英語の基本は主語、述語(動詞)、目的語だけれど、それを ”I love you.”という文で説明してみたい。 日本語では愛の告白に、<わたしは>いう言葉は要らない。<あなたを>もいらない。なんて簡単なのだろう。 なのに、どうして言いにくいのだろうか。 英語は、 I も You も欠けていては文とし成立しないし、意味そのものが成り立たなく出来ている。 まったく、逃れようのない論理性だ。 英語の” I love you.” は、必要最小限でリズミカル、しかし、きっちりとした文法をもっている。 そして重要なのは、動詞というものの性格のちがいである。 日本語の場合は、愛している、とか、好き、といった言葉は、その時の思いの”状態”を語っていると思う。惚れているとか愛しているという心の状態、好きだという意識、つまり止まっている状態の表現だ。 しかし英語の love というのは、動詞という名のとおり、動きをあらわす。 それは今の心の状態も表しているけれど、それよりも、あなたを愛す、これからも愛していく、という進行形的な動きを表している。 英語の動詞には、この動きがある。動詞は現在から未来へと進行していく。 I love you の love は愛するという動き。今、心が荒れていても、愛してるのかどうかわからないと思っても、相手を大事にしたいと思ったら、I love you.といえる。 つきつめれば、これからあなたをずっと愛していきたい、という気持ち、愛するという覚悟をあらわす言葉といって良い。 日本語では、口げんかしたあとに、愛してるよ、とはなかなか言えないものだ。 ワサワサした気持ちが残っていると、たとえ仲直りしても、すぐには言えないと思ってしまう。 こんな気持で自分はこの人を本当に愛しているかという疑問がわいていたりする。 今の心の状態が穏やかじゃないと言えない。 あるいは、すごくセンチメンタルに流されているとか、性欲がみなぎっている場合は、それどころではなく口走ってしまうかもしれないが、まあこの話の場合は、峠を越した夫婦の話として読んでもらうとわかりやすい。 だから英語人は、夫婦げんかだけでなく、親子げんかのあとでも、兄弟げんかのあとでも、ときには友達同士でも、派手なケンカをしては、えッ? さっきまであんなに激しくののしりあっていたのに、とあきれるほど真剣に抱き合って " I love You”と言い合ったりする。 これはまさに、愛する、という<動詞>のなせる技だと思う。 だから、毎日彼らはこの言葉を交わし合うのだ。 毎日の、それを自覚する運動となっているからだ。それこそがこの動詞 love の本義であり魔術。 アメリカ人(欧米人と言ってもいいと思うが、よくわからない)の夫婦が、いつまでも家庭のなかで、子どもの親としてだけではなく、夫婦として、女と男として、その関係をすたれさせず、だれさせずにいるのは、行動的な面で努力していることも大きいけれど、英語の魔術的な効用というのもあるのだと思う。
by keiorihara
| 2015-02-06 17:07
| 日本語と英語
|
アバウト
ブログパーツ
更新通知 Subscribe
更新のたびにメールでお知らせします English Translation Orihara Kei's Cat Blog 移民猫りりちゃん ハリウッドの丘から/折原恵のロサンゼルス通信 KeiOrihara LAblog 最新の記事
検索
タグ
写真(10)
ウォール街占拠運動(9) サニーサイド(9) ロングアイランドシティ(7) ブルックリン(6) ヒスパニック(6) NPO(6) アストリア Astoria(5) 不自由な日本語(5) シリア(5) 日本語と英語(5) サニーサイドガーデン(5) オキュパイ運動(5) 地下鉄7番線(4) サニーサイド Sunnyside(4) 9/11(4) フラッシング(4) 軍需産業(3) 格差社会(3) ウィリアムズバーグ(3) ラティーノ(3) ガントリーパーク(3) コニーアイランド(2) メーデー(2) コリアン(2) 天皇(2) いじめ(2) エンパイアステートビル(2) 桜(2) 独立記念日(2) いじめ防止法(2) ハイライン(2) 郊外住宅地(2) ハリケーンサンディ(2) イーストリバー(2) アーティスト(2) シリア戦争(2) ワールドトレードセンター(2) 遊園地(2) イスラム教(2) 薔薇(2) 都知事選(2) 児童虐待(2) キリスト教(2) 移民(2) アート(2) セントラルパーク(2) アイリッシュ(2) タイムズスクエア(2) ブルックリンBrooklyn(2) ブルックリン Brooklyn(2) アイルランド人(2) アストリア(2) 太平洋戦争(2) グラフィティ(2) チャイナタウン(2) 脱原発(2) アフリカンアメリカン(2) Times Square(2) トルコ人(2) 中国人(2) マスメディア(2) 中南米(2) タイ(1) タイ仏教寺院(1) ダマスカス(1) ダライラマ(1) ダンボ DUMBO(1) チェコバー(1) チベット(1) デモ(1) デモ隊(1) トップ1%(1) トレイヴォン•マーティン(1) トレンディ(1) ドミニカ人(1) ニューヨーク(1) ニューヨークの質感(1) ニューヨーク市立大学(1) ハーレム(1) ハラールフード(1) ハリケーン(1) ハロウィーン(1) バングラディッシュ(1) パフォーマンス(1) パレスティナ人(1) ヒューマニティ(1) ヒンドゥー寺院(1) ファーガソン(1) フォーレストヒルズ(1) フリーダムタワー(1) フリーメーソン(1) ブライトンビーチ(1) ブレードランナー(1) ブロードウェイ(1) ブロードウェイBroadway(1) ブログ(1) プラカード(1) ベトナム戦争(1) ベドウィン(1) カテゴリ
以前の記事
2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 最新のトラックバック
フォロー中のブログ
外部リンク
ライフログ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||