2017年 10月 30日
日々、シリアの惨状をニュースで聞き、ユーチューブで瓦礫と化した町まちを見るにつけ、言葉にならない思いと、悲しみ、怒りが押し寄せる。 ISIS(アイシス/イスラム国)が首都と定めていたラッカが、シリア民主軍(SDF)という得たいのしれない軍隊によって陥落した。 街は爆撃で瓦礫の山、もう街として機能しないくらい完全に崩壊している。勝利側は、アメリカ軍の空爆、武器支援を受けた、クルド人が主体の混合反体制派(反アサド)グループといわれている。 アメリカが武器をふんだんに振りまいて育てたISISを、これまたアメリカの空爆支援を受けアメリカにふんだんに武器を振りまかれたテロリストグループが追い出した、というわけである。 ワシントンのシンクタンクはすぐに声明を出した。これでISISがいなくなったわけではない、むしろ世界中に広く深く散らばって、今後もテロとの戦いは続くのだ、と。 いつものように、いや、ますますと人びとに恐怖をばらまいている。 シリアを旅したのは1990年。 イラクのクウェート侵攻の直前だった。翌年湾岸戦争が始まっても、間違ってもシリアの国土が戦争に巻き込まれるとは夢にも思っていなかった。それほど静かで平和な国だった。 確かに、はじめてダマスカスの空港に降りた時は、さすがに中東、そしてロシアから軍事援助を受けて国境線を守っているのだからここはもしかして社会主義国? と思わせる入管等の態度にちょっと緊張したものだ。しかし町に入ったとたん、そんなことは忘れてすっかりのんびりした気分になった。 緊張関係のある5カ国(トルコ、イラク、ヨルダン、イスラエル、レバノン)との国境をもった国、というより、古代からの隊商の都市、シルクロードの最終地点であり、物や人の顔が東西文明の交易の歴史を物語っている心豊かな国、と言った方がいい。 ダマスカスに入ったのはちょうど正午のお祈りの時間。まさかコーランの声が拡声器をとおしてこんな大音声で街中に流れているとは思わなかった。 魔法のような旋律と絶妙な長い間合い。枯れたテノールの声が開け放した車の窓から熱風とともに飛び込んでくる。 風景がアラブに塗り込められる。 そして夜、ホテルのベッドに横たわっていると、窓の外から突然耳をつんざくスピーカー音。夜中の12時にありえないほどの大音響である。窓の外は闇。闇を覆い尽くすコーランの祈りの声。 やはりここはアラブ人の、まぎれもなくイスラムの国なのだと否応もなく思った。 食堂/Damascus 喫茶店かと思って入ったら何かの待合所のようだった/Damascus なぜ、シリアはこんなことになったのか? なぜ、シリア国民はこんな悲惨な目に遭わなければならないのか? アメリカ、および西欧の世界戦略を歴史を追ってたどっていくと、それは、ここ数年に始まったことではない。 CIAはシリア介入を1949年に開始した。 #
by keiorihara
| 2017-10-30 15:43
| 番外篇
|
アバウト
ブログパーツ
更新通知 Subscribe
更新のたびにメールでお知らせします English Translation Orihara Kei's Cat Blog 移民猫りりちゃん ハリウッドの丘から/折原恵のロサンゼルス通信 KeiOrihara LAblog 最新の記事
検索
タグ
写真(10)
ウォール街占拠運動(9) サニーサイド(9) ロングアイランドシティ(7) ブルックリン(6) ヒスパニック(6) NPO(6) アストリア Astoria(5) 不自由な日本語(5) シリア(5) 日本語と英語(5) サニーサイドガーデン(5) オキュパイ運動(5) 地下鉄7番線(4) サニーサイド Sunnyside(4) 9/11(4) フラッシング(4) 軍需産業(3) 格差社会(3) ウィリアムズバーグ(3) ラティーノ(3) ガントリーパーク(3) コニーアイランド(2) メーデー(2) コリアン(2) 天皇(2) いじめ(2) エンパイアステートビル(2) 桜(2) 独立記念日(2) いじめ防止法(2) ハイライン(2) 郊外住宅地(2) ハリケーンサンディ(2) イーストリバー(2) アーティスト(2) シリア戦争(2) ワールドトレードセンター(2) 遊園地(2) イスラム教(2) 薔薇(2) 都知事選(2) 児童虐待(2) キリスト教(2) 移民(2) アート(2) セントラルパーク(2) アイリッシュ(2) タイムズスクエア(2) ブルックリンBrooklyn(2) ブルックリン Brooklyn(2) アイルランド人(2) アストリア(2) 太平洋戦争(2) グラフィティ(2) チャイナタウン(2) 脱原発(2) アフリカンアメリカン(2) Times Square(2) トルコ人(2) 中国人(2) マスメディア(2) 中南米(2) タイ(1) タイ仏教寺院(1) ダマスカス(1) ダライラマ(1) ダンボ DUMBO(1) チェコバー(1) チベット(1) デモ(1) デモ隊(1) トップ1%(1) トレイヴォン•マーティン(1) トレンディ(1) ドミニカ人(1) ニューヨーク(1) ニューヨークの質感(1) ニューヨーク市立大学(1) ハーレム(1) ハラールフード(1) ハリケーン(1) ハロウィーン(1) バングラディッシュ(1) パフォーマンス(1) パレスティナ人(1) ヒューマニティ(1) ヒンドゥー寺院(1) ファーガソン(1) フォーレストヒルズ(1) フリーダムタワー(1) フリーメーソン(1) ブライトンビーチ(1) ブレードランナー(1) ブロードウェイ(1) ブロードウェイBroadway(1) ブログ(1) プラカード(1) ベトナム戦争(1) ベドウィン(1) カテゴリ
以前の記事
2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 最新のトラックバック
フォロー中のブログ
外部リンク
ライフログ
その他のジャンル
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||