折原恵のニューヨーク写真日記 - New York Photo Diary by Kei Orihara

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2012年 05月 21日

オキュパイ運動のメーデー5(最終回)  Occupy Movement in Mayday 5

メーデーの日のオキュパイ運動の動きは、他にもマンハッタン中でいろいろありました。
ピケットと言って、大企業や問題企業の前で、抗議の声をあげる行動。逮捕者の多くはこの、アチコチのピケの人たちでした。
それからBlack Block という、全身黒ずくめで発煙筒を炊いて警察とやり合うことで、メディアの注目を集めたグループがいました。これはオーガナイザーのつかみきれないできごとでした。

わたしは、マジソンスクエアパークで開かれた、ニューヨーク市立大学の学生が運営した「自由大学講座」にはちょっと感動しました。もちろんオキュパイ運動賛同企画です。
公園内に座り込んだり立ったままだったりの輪がたくさん作られ、いろんな人たちが、ものすごく熱心に授業を聴いているのです。土地運動やら中東問題やら、詩の朗読やら。
プログラムを見ると、教授陣65人(すごい! )の授業案内が書かれていて、1〜1時間半の講義を90クラス開いたようでした。


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マーチはブロードウェイを南下して、完全にロックアウトされているウォールストリートを左手に見て、そのままさらに南下して、マンハッタンの南端にあるヴェトナム帰還兵公園に入りました。オキュパイの人たちは奥にある噴水を取り囲んでいつもの"General Assembly" (全体集会)です。

マイクが禁止されているので「人間マイク」を使って遠くにいる人にも聞こえるようにするのですが、まず演説する人が「マイク、チェック!」というと、聴衆の大勢が同じように「マイク、チェック!」と答えます。演説のすべての言葉を、このように復唱するのです。復唱することでその後ろのみんなにも聞こえるというだけでなく、言葉を自分のものとして噛み締める、つまり参加の能動性という二重の効果があります。
この立っている女性は、かなりの声量でみんなの復唱をリードする役をしているところ。

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次から次に誰かが、前後左右アチコチから突然演説をはじめます。そのタイミングの良さはアメリカ的といったらいいか。
2000人近くのひとたちが、この騒音のマンハッタンの中でマイクなしに集会を開いているのですから、すごいことだなあ、と私は見入り聞き入っていました。
わかりやすいように写真を明るくしていますが、実際はすごい暗いところなのです。
その暗闇の中で、二重にも三重にもなって響き渡る人びとの声、壮観、荘厳でした。


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左手後ろの女性が演説して、手前の男性が復唱のリーダーを買って出ています。
8時ごろから10時まで、勢いが落ちることなく続きました。


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10時の15分前ごろから、警察が「公園は10時に閉鎖します。10時に全員が退去している必要があります」みたいなことをスピーカーでがなり始めましたが集会は続いていました。
演説者の中には「公園を占拠して、朝まで集会を続けよう」(もちろんこれも全員が復唱)なんていうのもあったので、どうなるのだろうかと危ぶみましたが、10時5分前には背後から無数のヘルメットをかぶった警官たちが押し寄せてきて、全員は静かに公園を出ました。
みな帰りたくないようで、周辺の歩道は夜が更けるまで、まるで混んだパーティ会場でした。
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by keiorihara | 2012-05-21 12:51 | New York | Trackback | Comments(3)
2012年 05月 17日

オキュパイ運動のメーデー4 *人びとの声  Occupy Movement in Mayday 4

a0215638_128984.jpg「教育を受けることが、自分の一生を縛ることになるなんて!」と、学資ローンに苦しむ立場からの怒りの声。
アメリカの大学の学費は高く、州立大学でも年間$20000以上(200万円位)、私立となれば1年間で300万から600万くらいはふつう。なので、多くの人が学資ローンを使う。学生は何千万円もの借金を抱えて卒業することになる。
アメリカの大学生の卒業時の平均借金は250万円! そしてこれが民間の会社なので、利子8%以上、一度返済が遅れると雪だるま式に返済額が増えるシステム。しかも普通のクレジットと違ってひどいのは、破産が絶対にできないこと。


a0215638_12104653.jpgブロンクスサイエンスというエリート公立高校に通う高校生。このままでは大学に行けないと、学資ローンのひどい利子の仕組みを説明してくれた。学校の友達と3人でデモに来た。(写真をクリックして見て下さい)




a0215638_129466.jpgフィラデルフィア警察を8年前に退職し今はニューヨークに住んでいる元警察官。
「アメリカを理解するために、映画”インサイド•ジョブ”を見よ。作られた金融危機、大企業資本家たちの強欲についての映画だ」
この映画、日本でも公開されたようです。


a0215638_1283755.jpgオキュパイ•カトリックの神父さん。貧しい人たちのために、みなといっしょにできることをしたい、と言葉少なく。



a0215638_12111913.jpg州ごとに雇用者に義務づけられる最低賃金が、ニューヨークでは7ドル25セント!  これではとても生活できない。週7日働いている人、昼夜二つの仕事をしていて子供の顔も見れないという人もいる。切実である。地下鉄駅の改札で。



a0215638_5211319.jpg障害者の仲間といっしょに住んで、活動している。夫も車椅子の障害者だそうだ。




a0215638_5255857.jpg独立して経理の仕事をしている。妻と一緒に来た。






a0215638_5275151.jpgネイティヴアメリカンじゃなさそうなので聞いてみたらプエルトリカンだそうです。勇ましい!

a0215638_529374.jpgクイーンズのフラッシングでコミュニティ運動をしているコリアン。






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a0215638_11592770.jpgオキュパイ運動は確かに若い人が多い。当然です。
借金を抱えて大学を出ても、高額な医療保険を買えるようなちゃんとした職がない。大学に行けなかった人は、モノを作る現場がすべて外国に行ってしまったので、さらに職がない。
自分の力で大金持ちになるというアメリカンドリームは、いまや戦争を喜ぶような投資の中にしかない。
敵は、はるか遥か彼方にいて、手が届きようがない。

a0215638_124523.jpg OWS (Occupy Wall St.)の鼻飾り。





本当に、これは希有な運動です。ヒステリックだった60年代、70年代の日本の学生運動とずいぶんちがいます。
「連帯」という言葉がアメリカ人の口から叫ばれるとは、いままで夢にも思いませんでした。
これほどはっきりした反体制運動でありながら、非暴力をはっきりと打ち出している。
これほど来るもの拒まずの自然発生運動体でありながら、内部モメもなければ(知るかぎりでは)、トンチンカンなプラカードも一つもない。
これは持続しなければいけない、これが今みんなが思っていることなのだと思います。

ウォール街占拠運動のサイトに出ていた「メーデー連帯共同宣言」の素晴らしい日本語訳を見つけました。また、このブログには、ウォール街占拠運動の組織の事など興味深い記事や、ナオミ•クラインの公園での演説の翻訳なども載っています。読んでみて下さい。

(つづく)
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by keiorihara | 2012-05-17 05:11 | New York | Trackback | Comments(5)
2012年 05月 14日

オキュパイ運動のメーデー3  Occupy Movement in Mayday 3

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オキュパイ運動のマーチはその日まで、どこを歩くか決まっていませんでした。
デモ(彼らはマーチと呼んでいますが)の許可が取れていないので、42丁目のブライアントパークから14丁目のユニオンスクエアのメーデー会場まで、五番街の西側の歩道を歩き始めました。鮨詰め状態です。自ずと歩道からはみ出てしまいます。
赤信号で止まってなんかいられません。
そんなわけで、ご覧のように数ブロックのうちに、五番街からすっかり車がいなくなりました。


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32丁目付近に先回りして待機していた私は、デモの先頭で突如何かが起こっているのを知りました。
デモが車道に雪崩出たのです。

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近づくと当たりは混乱状態で、警察もどうしていいのかわからないようでした。


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何が起きているのかわかりません。向こうの方でものすごい嬌声がしているのです。オキュパイのトレーニングチームが撹乱のために輪になって、中で何が起きているのかわからないような動きをして、警察官たちの目を引きつけるのです。
ちなみに中央のスーツを着ている人は私服の警察官。オキュパイのいるところにいつも来ていて制服警官に指示をしています。

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オキュパイデモの参加者はみなカメラをもって警察の動きを撮影します。ほとんどは動画です。
オキュパイのサイトでは、デモに持参するもののリストにカメラがありましたが、警察の様子を撮影してネットで流すように呼びかけています。警察は下手に手出しができません。

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この写真を見て、混乱ぶりに思わず笑ってしまいましたが、誰もがわけのわからない動きをしています。私も前に進んで撮影する事をためらって、へんに冷静になったりしました。
逮捕が予測できないからです。

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車道に解放されてスピードと活気を得た人たち。

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オフィスから出て来て見物する人たち。

(つづく)
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by keiorihara | 2012-05-14 15:27 | New York | Trackback | Comments(0)
2012年 05月 09日

オキュパイ運動のメーデー1   Occupy Movement in Mayday 1

メーデーは、オキュパイ運動にとって久しぶりの大きな行動になりました。
事情により、更新が遅れてしまいましたが、メーデーを少し続けます。

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雨がやっと止んだブライアントパーク。警察の横暴に抗議する人たち。右の写真は悪名高いニューヨーク警察署長。

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ユニオンスクエア。総決起集会

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ユニオンスクエア

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ユニオンスクエア

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ユニオンスクエアのステージ。ダイレクトアクションの女子メンバー。
このあとラップ、ジャズ(ヒップホップ的な)他の有名ミュージシャンたちの、まさに抗議のメッセージソングがつづく。

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ユニオンスクエア前の歩道は入りきれない人で混沌。

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大きな小切手は、企業がインターンと称して若者を何ヶ月もただ働きさせること(昨今の一般的風潮)への抗議。インターンに今までの合計20億ドル払え、と。

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右手のプラカードは、「1%の人間が政府を金で買い、99%がそれを支払っている!」

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マーチはマンハッタンの中央ブライアントパークから始まり、ウォールストリートの南、ベトナム帰還兵公園まで7〜8キロ。年配の人たちもたくさん歩きました。

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無許可の五番街をまさに「車道占拠」してのマーチ。

(つづく)
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by keiorihara | 2012-05-09 00:51 | New York | Trackback | Comments(0)
2012年 04月 20日

オキュパイ運動の若者たち  The youth of Occupy Movement

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ニューヨーク郵便局本局前。税金申告最終日はオキュパイタックスの日。
彼のプラカードに書いてあること。
[GE=General Electric (電気製品で知られる国際複合企業体)は、ロビー活動によって、連邦法人税の支払いをゼロにした上に、39億ドル(ABC Newsによると32億ドル)を優遇措置で得ている。ちなみに2010年度のGEの計上利益は140億ドル(1兆1300億円)である。
あなたは何を払ってるの? ]

聞いてみると彼は州の裁判所の職員。
給料の34~35%を税金でとられているそうだ。
ちなみに年収、日本円換算で¥1200万以下の人は平均36%の税金を支払っているが、1億円以上の人は平均17.5%,  企業は平均11.2%しか支払っていない。(http://99solidarity.net)
確かにこれだけ税金を取っておいて、健康保険もなく、学校の給食はファーストフードで、道はでこぼこ、いったいどこに使われているの? と思ってしまう。 (答えー軍需産業や失敗した大手金融業の補填に使われている)


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左は医学生、右はアクティビストと答えてくれた。
「国はまっとうな健康保険を提供するべき。オバマがやったのは、保険会社をさらに儲けさせることでしかない。根本から変える必要があるのに」
「文明国で国の健康保険がない国なんて、どこもない。恥ずべきことです」
医者や医療従事者のグループで、毎週会合をもっているそうだ。


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オキュパイ•マリーンズのメンバー。このグループはNY警察の横暴から集会やマーチを守ることを自負している。
海兵隊に5年勤めた。「もう、うんざり。今は建築労働とパーティイの企画と運営をしている」
日本語で挨拶してくれた。
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by keiorihara | 2012-04-20 16:22 | New York | Trackback | Comments(3)
2011年 12月 06日

「反格差運動」という言葉 (Photo)Grand Central Station

日本のニュースをネットで読むと、ウォール街占拠運動(Occupy Wall St.)のことを、格差反対デモとか反格差運動などと名付けている。
なんだろう、その名称への違和感は。

ただ格差に反対するという言い方は、ちょっと社会主義的な感じがする。
本来平等であるものを格差をなくせ、と言っているのようにきこえるからだ。
アメリカでは人権は平等であるべきだけれど、人の賃金や待遇が皆平等であるべきだという発想はもとよりないので、格差があることは前提であると思う。
つまり金持ちと貧乏人の差が大きすぎる、といって、その”格差”に反対しているのではないのだ。
”格差社会反対”なら少しは納得できるものがあるが。

問題は日本で使われている”格差”という言葉を、日本のマスコミは何の定義もせずに、何も考えずに、違う社会で起きていることに使っていることだ。
なぜ”ウォール街占拠”運動では、いけないのだろうか?  なぜ、ちゃんと翻訳をせずに外国映画に対してよくやるように、別の日本的な言葉に言い換えるのか。(映画に関してはそれが良いときもあるけれど)
格差反対という言葉は、ある法律の適用範囲に格差があるので反対、とか、男女賃金の格差に反対という場合には、意味があると思う。
しかし、たんに格差反対では、金持ちと貧乏人がいることに反対と言っているみたいで、アホみたいではないか。(実際、日本の新聞とネットニュースには何の追求の姿勢もなく、とても冷ややかな、あるいは馬鹿にしている口調である。)

なぜ、格差反対ではなく、”ウォール街を占拠せよ”なのか。
政治が99%の国民のためにあるのではなく、ウォール街を動かす1%の資本家層のためにおこなわれていること、1%の人間の富と権力のために99%の人びとが犠牲になっている、このような社会のシステム(体制)を変えよ、という運動だからだ。

高額所得者を優遇し低所得層を冷遇する税制。税金をしこたま取っているのに国の健康保険もない。医療費も薬代も信じられないほど高い。民間の健康保険も考えられないほど高い。なのに多くの疾病がカバーされない。保険会社が病院も医者をさえも動かしている。保険会社や製薬会社が政治を動かしている。オバマも保険会社や製薬会社の宣伝マンだ。
税金の20%が、武器を生産し貧しい国を侵略し弾薬を消費し人殺しをすることに使われている。兵士をリクルートするのが大変だから、つねに一定程度貧困層をキープしておかなければならない。軍隊に入れば大学だって夢じゃないよ、これが今でも殺し文句だ。(実際のところは入隊しても大学は夢の彼方だというが)

こんなことを書きはじめたらきりがないのでやめる。
言えることは、ウォール街占拠運動は、格差反対などというぼやけたものではなく、観念的なところのまったくない、きわめてポリティカルな、そして根源的な反体制運動であるということ。
民主主義なんてどこにもない、金と権力(ウォール街)が、政治を動かしていることへの異議申し立てなのだ

アメリカにいると、日本はきわめて平均化した格差のない国だと感じる。
日本ではバブル崩壊後の不況の深まりとともに(2005年以降だと思うけれど)、声高に”格差”という言葉が使われるようになったと思う。
でも、バブル期の方がはるかに格差があったように個人の経験からは感じるし、じっさい調べてみたらそのようだ。
一億総中流といわれながら突入したバブル期にも貧困はあったはずなのに、日本には貧困がないことになっていた。存在を認知されていなかった。それに私たちは、バブル期を楽しむのに忙しく、そういう事実をあえて見たいとは思わなかったのだ。
それがバブル崩壊後、不況がつづくにつれて少しずつ、たとえば湯浅誠さんら貧困者を助ける活動をしている人たちの努力などに負うことも大きいのかもしれないが、高度経済成長以後初めて”貧困”に光が当てられたように思う。
貧困の認知とともに、格差が浮かび上がった。

日本の格差は、本当に拡大しているのか、少なくともひと世代前より格差が大きいとはどうしても信じられない私である。
日本でも”反格差運動’があるらしいが、原発問題はじめ、変わらない日本、省庁が決める政治の問題を考えるとやはり、”霞ヶ関を占拠せよ”または”反霞ヶ関運動”こそ、本当のところをついている運動ではないかと思うが。

つぎからは、もっと身近なことを書くことにします。(こんなことをしつこく書くつもりじゃなかったのに、つい)

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グランドセントラル駅
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by keiorihara | 2011-12-06 13:00 | USA | Trackback | Comments(2)
2011年 11月 22日

Occupy Wall Street ウォール街を占拠せよ 3

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サポーターがマンハッタンの至る所でパソコンからプロジェクターを使ってビルの壁面に言葉を投影している。
橋の車道からはクラクションが鳴り続ける。

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Occupy Wall St.の運動が始まってちょうど2ヶ月の呼びかけに応じてデモに行ってきた。
いつも送信してくるグループのメールには、シティホール(市議会ビル)の近くのF公園に5時に集まってブルックリンブリッジに向かうと書かれていた。

シティホールの地下鉄出口の階段途中から、かなりのザワメキが聞こえてきた。
大勢の人たちが横断幕やプラカードを持ってうろうろしている様子。
ニューヨークの5時過ぎは、もう真っ暗。どうなっているのかぜんぜんわからない。
暗闇の中に「車道に出た歩行者は逮捕する」という赤々とした大きな警告文字がフラッシュしている。
それにしても、ものすごい数の警察、騎馬隊、待機する護送車、報道のワゴン車。
めざす方向に歩を進めると、歩道がフェンスで閉ざされていて交差点を渡れない。反対側から回るとまたフェンス。交通止めになっている車道に出ると、ポリスに押し戻される。
「大勢は向こうの方に集まっているらしいよ」と言いながら、どうやら皆、行き道を失っているようだ。
ヘリコプターが大音響で上空をひっきりなしに旋回している。しかし、人びとはじつに大人しい。

仕方がない、地下鉄駅構内から反対側の出口に出てみた。知らない風景にしばらく物珍しさであたりを歩いていたら、完全に道に迷ってしまった。
このあたりの街路は碁盤の目じゃないし本当に暗い。何であんなに闇雲に歩き回ったのかわからないけど、(何か、警察や人に聞きたくない気分で。いや、なぜか群衆ではなく誰もいない夜の街にいたくなったのだ)寒空を一時間以上うろうろして、もとの地下鉄駅構内に下りたら、大勢の人が改札口に戻って行く。自分もすでに疲れ果てているように感じて、もう帰ろうかと思った。
いやしかし、と、もう一つの出口を見つけて上って行った。

そこから遠くに、橋を渡る大勢の人たちの頭だけが黒々と見えた。どうやらここから近づけそうだ。
しばらく歩いて、すんなりとデモの波に入れた。
いつもの、”Occupy Wall Street! ” , "We are the 99%!" を歌うように唱和する若者たち。
橋のボードを歩き始めたら、”もう途中で戻ることはできないんだよ” と大げさにも自分に言い聞かせた。
まさかこんなことでブルックリンブリッジを初めて歩いて渡ることになろうとは夢にも思わなかった。どれくらいの距離があるかということさえ知らないのだ。(あとで調べたら1、8キロだった)

じつはちょっと不安だった。10月にここで700人が逮捕されているのだ。
私は逮捕されても明日の仕事に差し支えるわけではない。IDやカードの類いは一切持ってこなかったけれど、しかし、へまをやってバレたら、移民ビザに影響 するのではないか?  逮捕されたら絶対に黙秘を貫くんだよ、と言って送り出してくれた夫に、けっきょく迷惑をかけるのではないか? と、つまらないことを考えていた。
この橋を渡った向こうに警察が待機しているのだから、ちょっとしたいざこざで、どんな事態に巻き込まれるかわからないのだ。

運転席から人びとの頭の群れが見えるらしく、たくさんの車が窓を開けて親指を立てたりクラクションを鳴らしたりして、応援の姿勢を見せる。デモの姿が見えているかぎり、ずっと、クラクションが途切れなく聞こえていた。
かなりの人たちがOccupy Wall St.にシンパシーを感じているのだ、と思う。

年配の男女も多い。知識人然とした熟年の人たちもけっこういる。黒人、ヒスパニックの顔もずいぶん増えた。
よーく見ていると、一人で歩いている人たちの何と多いことか。
友達同士和気あいあいと、とか、グループ活動、みたいな雰囲気がぜんぜんない。
ただ、ひとりひとりが歩くことを選んで、ここにきている。クラクションの音に励まされて、黙々と歩いている。

どこに向かっているのかわからない運動。けれど、 きょうは、とりあえずこの橋を渡る。
黙って歩いている皆は、どんなことを思っているのだろうか。
" Show me, what democracy does look like! This is, what democracy does look like!!"
このかけ声は、いつも私を泣かせる。
ドライバーたちに手を振ったら、涙が出てきて止まらなくて困った。

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ブロンクスからきた高校生たち。
大学の授業料は高く、黒人の大学入学者数は、黒人の刑務所入所者数よりはるかに少ないという現実。



ニュース”Democracy Now!" (日本語要約版)によると、
朝からウォール街の証券取引所の閉鎖めざして実力行使をした人たちが大量に逮捕された。昼にはユニオンスクエア、クーパーユニオンなどの大学周辺で集会の人びとが道路を埋め、ここでも逮捕者が出た。タイムズスクエアでもデモ。夜は閉鎖されていたブルックリンブリッジを逮捕覚悟の座り込み戦術で突破し、32000名が橋を渡るデモンストレーションがおこなわれた、と。逮捕者計250名。デモ、集会参加者は、マンハッタン中に拡散していて、何万人いたか数えきれない数になっただろうと思われる。
コロンビア大学、ニューヨーク大学などの年間授業料が500万円くらいする大学に通い、卒業したら1%に入る予定の学生たちは、ひっそりと沈黙を守っているようだが。

厳冬のニューヨークをはさんで、この運動は熟成され、春にはもっとすごいうねりとなってこの国を覆い尽くすかもしれない。人びとの暗くシリアスな顔を見ていて、持続の可能性を信じずにはいられなかった。
これは凄いことになるかもしれない、さっきの疲労などとっくに忘れて、私はちょっとした興奮を覚えていた。

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by keiorihara | 2011-11-22 17:59 | New York | Trackback | Comments(0)
2011年 10月 30日

Occupy Wall Street ウォール街を占拠せよ 2

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Occupy Wall Street の運動にたいして、前回、リーダーがいないし、闘争目標がバラバラ、というような心配事を書きましたが、思うに、まさにこの点において、この運動はアメリカにおいて、新しく素晴らしいのかもしれない、と思うようになりました。
つまりここには、オバマよどうしろとか、イラク戦争反対とか、医療保険のA案に反対とかというこれまでの抗議と比べると、そこには根本的に異なる大きな怒りと絶望があるからです。

「ウォール街を占拠せよ」 という、かけ声というか運動の名称も、考えたら、秀逸だと思います。
彼らはもう、議会など相手にしていない。議会制民主主義すら信じていない(プラカードに、投票するな!というのもありました)。
合衆国の連邦議会で行われていることがお芝居であることを見抜いている。(まあ、日本の国会も金屏風の前の猿芝居だと思いますが)
この国のほとんどの議員が上流の出身(アメリカの階級社会についてはまたの機会に)で、ウォールストリートのために働くことが国会議員の仕事といえます。(そうではない議員も一人くらいいるようですが。アフガン攻撃、イラク攻撃に反対した議員はたった一人だったのです)

こ のウォールストリートを動かしている層というのは、この国のトップ1%の資本家層(といっても人口3億人を超した合衆国では300万人にもなりますが)、 そのうちのさらにトップの国際金融資本家層、ロックフェラー、メロン、デュポン、モルガンなどの財閥と軍需産業、石油産業、製薬産業などの多国籍企業家た ちと、それへの投資家層。
彼らをもうけさせるために、この国には外交(経済コントロールあるいは戦争)というのがある。議会で話されている主なことは、この”外交”です。
まさに、” We are the 99%" というシュプレヒコールは、根本をついているラディカルな声であると思われます。

この国が曲がりなりにも機能しているのは、州や市の地方自治体の行政がしっかりしていることと、たくさんのボランティアをかかえた、ものすごい数のNPOの働きがあるからです。

しかし、この国の上層の非情な金銭欲は、アメリカの企業全般の体質になっているように思えます。
儲けるためには、どんなことをしてもヘイチャラ。訴えられても必ず勝つようになっているようです。サービスなんてことは頭にもありません。
例えば私の経験で言うと、病院•医院は、コンスタントに請求書を二重に取り立てます。または電話会社、ガス会社などはコンスタントに数字を間違えます。
請求額を銀行に自動振替をしたらおしまい。10ドルくらいの数字の違いは気がつかないことがあります。

電 話会社に、使用料金と請求額とが違うと電話したら、請求書は別会社がやっているので、我々電話会社とは関係がありません、請求会社に電話してください、と いわれる。そこに電話すると、この会社は請求書を出しているだけで、この数字は会計会社から来たものだから、会計会社に電話しろと言われる。そこに電話す ると、この数字は電話会社から来たものだ、といわれる。
それまでに、音声レコードでどこどこに用件の人は数字3を押してくださいとか、ものすごく疲れる作業を強いられる。その前に、混み合っていますのでお待ちください、という機械音に辛抱強くつきあわなければならない。電話代もかかる。
たった10ドルのために、これほどの時間と労力と苦痛を味わわなければならないなら、もういいやと思う。面倒くさいと。
このような手法で、つまり卑怯な手法で、庶民は金を巻き上げられている。

Occupy Wall Street の運動は、この国の資本主義の体質そのものを問うている。
資本主義の行き着く先の悲劇を問うている。
資本を手にした者たちの権力ゲームの冷酷さを問うている。

この運動には目標がないと批判する人がいる。先がないと。
確かに、そうだ。
革命でも起きないかぎり、彼らの抗議は聞き入れられないだろう。
アメリカ帝国主義粉砕! と、声をあげたことに近い。
ある意味、とても過激な運動ともいえるのではないかと思う。
でも、いちばん大事なことは、声をあげたこと自体なのだと思う。

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証券取引所向かいで行われているアートショー[Loft in The Red Zone] の作品より
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キャンプ地Zuccotti Park(前回にリバティパークと書きましたが、2006年に名称変更していました。金を出した金持ちたちが自分の名前を付けたがるのでしょっちゅう変わるのです)で、思い思いのプラカードを書く人たち。

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「オバマを変えよ」 または「オバマよ、変われ」かな?

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シュプレヒコールが音楽的。

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これらの写真は、10月9日撮影。

きょう、10月29日昼、初雪が降り始めました。買い物がてら近所で写真を撮って、それからもう3時間も降り続いています。今摂氏1℃
ズコッティ公園に寝泊まりしている皆はどうしているでしょう。。。。

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Sunnyside 10/29 12:00PM
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by keiorihara | 2011-10-30 04:19 | USA | Trackback | Comments(1)
2011年 10月 05日

Occupy Wall Street ウォール街を占拠せよ

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 太鼓の音とシュプレヒコール  
 ♪ Show me! what democracy does look like!  
 ♪  This is! what democracy does look like!
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♪ Bank got bail out! ♪ We got sold out!
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♪♪ We are the 99 %!!
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Liberty Square Park

前日の日曜日、ブルックリンブリッジの車道でデモ隊の中から700名が逮捕された。
このところ毎日雨が続いたにもかかわらず、” Occupy Wall Street" の運動は少しずつふくれあがっているらしい。
3週間目、全国30都市にひろがっているという。
ネットで見ても、ポイントのはっきりしないデモだなあと思ったものの、やはり行ってみなければわからない。

ウォールストリートはもしかしたら初めて歩いたかもしれない。ビルの大きさに比べて意外と狭い道だ。
証券取引所一帯は車道がロックアウトされ、デモ隊は広がって歩くことができないようになっていた。
デモの拡大を恐れて、すでに9月17日にフェンスが張られたそうだ。
証券取引所の向かいの旧JPモルガン銀行の空きビルでアートショー をやっていたのでそれを見ていたら、聞こえてきた。太鼓の音に合わせてシュプレヒコールを唱える人びとの声が。
急いで外に出たら、どういうわけか胸がバクバクしている。
小雨が降り続いている。
昔の日本の学生運動のように、腕を組んで激しく走るデモではない。
ゆっくり歩きながらその速度にあわせて、まるで歌うように声を合わせている。しかし、声は力強い。
太鼓のリズムがじつにいい。
各プラカードを読む。唱和が聞き取れないので、なんと言っているのか声をあげている人たちに聞く。
一緒に雨の中を歩く。1ブロック、2ブロック。たくさんの警察官のオートバイが横をとろとろと動く。
なぜか目が潤んで、感情が揺さぶられている自分に気づく。なぜだろうと思うけれど、わからない。

プラカードには、1%の資本家たちに握られているこの国の体制を終えよ!  職を与えよ、国民健康保険、学生ローンの救済、学費値下げ、税金を銀行家に渡すな、国民のために使え、税金で人殺しをするな、、、、国民の99%は怒っている!  と、ありとあらゆる抗議が書かれている。
リーダーが全然いない。闘争目標がまちまち。
ちょっときびしいなあ、と思う。

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We are The 99 Percent!

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ウォールストリートの人とデモの人たち

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Liberty Square Park

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これからニューヨークは長いきびしい冬が始まる
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by keiorihara | 2011-10-05 15:49 | New York | Trackback | Comments(0)