折原恵のニューヨーク写真日記 - New York Photo Diary by Kei Orihara

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2013年 02月 02日

地下鉄のピアニスト Pianist at Subway Station

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Subway, Times Square駅  ショパンのノクターンが構内いっぱいに聞こえています。力強くて上手い。


前回、いじめと学校のシステムについて書きましたが、他の国のことを引き合いに出して何かを語ると、なんだか後味の悪いものが残ります。私は、いじめというものは社会の縮図なんだから、なくならない、という前提です。ではどうしたら自殺するような子が出るまで、まわりが放置してしまうか、ということが問題であり、実際的な防止の方法に、このような側面が考えられます、ということで、私の見たアメリカの小中学校を思い浮かべたのです。

ただ、わたしはたまたまアメリカで、いくつか覗いた学校がうまくいっている雰囲気のいい学校で、どうしてこんなに先生方に熱意と余裕があるんだろう、という感想を持ったわけですが、一方、アメリカの公教育は崩壊の危機に瀕しているとはよく聞くことです。

国の存在基盤が大きくちがっている国のやっていることは、考え方が基本的にちがうのです。
アメリカの公教育は(アメリカは高校まで義務教育)、国がタッチしていなく、ほとんどが市や町村の税金 と学校区で運営されていて、その形態やシステムなども場所によってマチマチです。
区域によって学校の質が大きく異なるのは、その地域のproperty tax (不動産税)の入り方によるからです。高級住宅地にある公立学校は税による資金が潤滑で、へたな私立に何百万円も払うよりはるかに良い設備と教師陣を持っているという話ですが、低所得層、たとえばプロジェクトという公営住宅群に住む黒人の多い地域の学校は、資金も貧しく、教師のレベルも低く、治安も悪く、建物の雰囲気も悪い。格差は日本からすると考えられないほど大きいのです。

予算をどのように作るか使うかも、その学校区や校長の考え方によっていて、親たちのバザーで体育館を建てたとか、給食をマクドナルドに参入させて寄付を得るとか、サッカー場をナイキに寄付してもらうとか、びっくりする話、ひどい話が満載です。

いずれにせよ、日本と比べて、アメリカの親はかなり子どもの学校や教師に関わりを持っていると思います。何かあるとすぐに担任やら、カウンセラーやら進路指導の先生から呼び出しがあったり、ミーティングに集合がかかったり。仕事が夜7時までだから無理だといえば、夜の8時とか、朝7時半の面会の約束になるそうで、日本人の親たちはびっくりです。

三人の子をもつ日本人の友人から聞いたのですが、小学低学年の娘がアメリカに来たとき当初、学校や英語になじめず家に帰って泣いている、どうしたらいいかと担任に相談したところ、教師はすぐにその子の家にやって来て夕食をともにした。(男の先生で、大学教授の奥さんと一緒にきたそうです)
先生が来てくれて食卓で自分と特別に会話してくれたことに娘はえらく感激して、また先生のほうもその子をより親密に知ったことでよりわかり、それとなく仲間入りできるように誘導したりと、たった一晩の行動が、一気に娘の心に灯をともしたらしく、すっかり学校好きになったそうです。
こういう話はたくさんあって、その子のためにどうしたら良いか、親も教師も一緒になって、できることからとにかくやってみよう、という態度がある。家に行く、と言ったのは教師で、それでは夕食をと言ったのは両親で、そういうことがとても簡単なのがアメリカです。
このようにアメリカの教師も、ものすごく忙しい、ということは変わらないようですが。しかしながら、母親も父親もボランティアで学校行事を手伝ったり、寄付集めの活動をしたり、課外授業の補佐をやったり、これはアメリカ中どこでもそうだと思いますが、一緒に学校を良くしていくという気持ちがあるようです。

話は元に戻りますが、アメリカに来て感じるのは、つくづく日本は社会主義的な国で、何もかもが平等で同じで、市民はサービスを受けるだけ、と考えているのだなあ、と。
そしてアメリカはあまりにも資本主義的。
”お金を稼ぐ能力を持った、あるいはそのために努力した人間は、報われなくてはならない。お金のない人は、努力が足りないし能力のない人たちだ、そんな人たちのために税金を使ってほしくない” という考えの人は、親の世代には多いし、共和党支持の人たちの多くは、そういう考えです。つまり学校の格差は当然と思っている人も少なからずいるのです。
もちろんそこには論理の飛躍があって、この国は差別(多くは人種、新移民、それを包括する職種への)によってそれが実現しているという現実に眼をつぶっています。

不動産税とか固定資産税と訳されるプロパティータックスというのは、あきらかにそこに住む人たちの経済事情を反映しています。賃貸アパートメントでもオーナーが税金を払うわけですが、家賃の高い地域と安い地域では雲泥の差でしょう。公営アパートからは税金は入りません。子どもたちに良い教育を受けさせたいなら、住宅にお金を払わなければならないということ。
実際、アメリカの多くの親は、引越し先を決めるのに、まず学校を見てから、という順番のようです。

自分の子に良い教育を受けさせ、安全な環境(そんなところは何処にもないことが、コネティカットの小学校銃乱射事件からもわかりますが、これは別の問題です)を与えてやりたいと思う親は、かなり無理をしてでも良い地域に住むか、私立に年間何百万円も払うか、お金で何とかせねばならないらしいです。
もちろん、そんな考えを屁とも思っていない、たくましい人たちもいるわけですが。



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Jason Cordero, pianist performing at Times Square Subway Station, Manhattan.
クイーンズに住むエクアドル移民の子。6歳の誕生日に父親からプレゼントされたおもちゃのピアノで才能に目覚め、7歳で教会のメインピアニストになり、将来ジュリアード音楽院に入りたいと自ら決め、11歳から地下鉄駅で演奏を始めて、いま15歳。アップルのコンピューターもデジカメもみな、自分で稼いだお金で買った。
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by keiorihara | 2013-02-02 00:38 | Manhattan | Trackback | Comments(0)