折原恵のニューヨーク写真日記 - New York Photo Diary by Kei Orihara

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2014年 02月 16日

アメリカの格差と貧困

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いつ見てもホレボレするガントリー


日本では、格差と貧困ということがずいぶんふつうに語られるようになりましたが、そこでわたしは、アメリカの格差は日本とくらべて比較にならないほど大きいというようなことを言いました。
しかし、比較にならないほど、というより、そもそも日本とアメリカの格差は、比較してはいけないと思うのです。というのは、格差の質がぜんぜんちがうし、異なった構造の格差だと言ったほうがよいからです。

まずはこの国は、移民でなりたっている国であること。(もうこれだけで、日本と180度ちがいます)
ヨーロッパの植民地から独立して始まったこの国の歴史を語らなければいけないのですが、そんなこと(インディアンのこととか憲法のこととか)をはじめたら人生の時間が足りませんので、現時点のことだけを書くことにします。

この国は、黒人奴隷という大きな労働力によって農業の基礎を作り、工業を発展させてきました。
またいつの時代も”新移民”が、最低賃金の労働力として、全産業をその底力となって支えてきました。
アメリカのことを書くとき、大ざっぱですがこの前提は重要だと思います。そのうえで、自分の見たこの国の格差の印象を書いてみます。

私は、ニューヨークに来る前に、ジョージア州アセンズという州立総合大学のある人口10万人の大学町に住んでいました。
そのうち5万人強が学生および大学関係者ですから、比較的民度の高い町といえると思います。
しかし貧困線以下の暮らしをしている人が24%(学生を除いても21%)と、全米でもかなりの貧困率の高い町でもあります。
そのアセンズの、平均的ミドルクラスの家族持ちはたとえばこんな感じです。
どんなふうに豊かな暮らしが保たれているか、ここで描く風景の一こまですが、ミドルクラスの家庭のクライアントはほとんどが白人で、労働する人はほとんどが有色人種といわれる人たち、と思って読んで下さい。

たいていの夫婦はどんなに子供が小さかろうと、子供が2人いようが3人いようが、夫婦は両方ともフルタイム、そうでなければ4〜5時間、弁護士の仕事をするとか、そういう仕事を持っています。(多くは夫婦共稼ぎのうえでの豊かさです)
乳児からのデイケアがたくさんあって、良いところを捜して入所の手続きするには苦労があるにしても、かなりフレキシブルな時間対応をしてくれます。
それから、専門の乳母、というかベビーシッター派遣の会社やオーガニゼーション(ノンプロフィット)もあり、また、パートタイムのシッターの個人契約をしているひともいます。
給料のかなりを子供のケアに使ってでも、夫婦の両方が働きつづけるのが一般的です。自分がどうというより、子供はほかの子供や大人と交わって育つのが良い、というかそうすべき、と多くの人がそう思っているので、迷いはないようです。
そういう感じなので、金曜の夜などにバーに行くと乳飲み子や小学生の子供を持っているはずの女性が、のんびりと夫や友達とお酒を飲んで楽しんでいます。
デイケアやベビーシッターの多くが、黒人女性です。

1週間に一度、お掃除のひとが来て、家中に掃除機をかけ、ホコリをすっかり拭き取ってくれる。お風呂もトイレもピカピカです。
日本人女性でジョージア大学で大学教授になった友人の話では、大学院修士の学生でさえ、アパートメントのクリーニングを週1で雇っている人がけっこういるそうです。彼女や彼たちはどこであろうと、掃除というものは自分がやるものではない、と思っている。そういう家庭に育っているし、アメリカでは公立小学校でも掃除をするのは用務員とか掃除人ですから(夜を徹してやっています)、掃除などしたことがないかもしれません。(と、その日本人はあきれているのですが)
そういうわけで掃除会社は、すでに巨大チェーンの会社がいろいろあるようです。ジョージアでは黒人以外にフィリピン人のハウスクリーニングの人に会いました。黒人女性の仕事といえばメイドでしたが、今はフルタイムのメイドというのはアッパーミドルじゃないといないのではないかと思われます。

それから、庭の枯れ葉の掃除、芝刈り、植木の手入れなどのガーディナーですが、やはり専門の会社から派遣された人たちが働いているようすはいたるところで目にしました。多くはネイティヴ系(インディオ系)の小柄なメキシコ人の男性です。何十年も同じ家に通っている個人契約の黒人のおじいさんもいます。そういえば、賃貸のわたしたちの家にも、オーナーに雇われている黒人男性が来ていました。月に一回くらい(夏はもっと)だったと思います。芝生というのはすぐにのびるのです。

それから、これはその町の一般的な場面での大ざっぱなイメージです。
シェフのいるちゃんとしたレストランに行くと白人の(あるいは白人系の)若い女性または男性がウェイトレス、ウェイターをやっていますが、ハンバーガー、フライドチキン、ドーナッツなどのファーストフードチェーンのキャッシャーといった、賃金が安いうえにチップをもらえない店は、若いけれども多くが黒人かヒスパニックです。
レストランのシェフは白人だけど、奥で下ごしらえで働いている人たちはメキシコ人、という具合です。


レストランなどは、肌の色の差別、という感じがしますが、全体的には格差の多くは教育、つまり学歴です。
黒人も大学院までいけば、とにかく教師や技師やの専門職、あるいは会社の管理職につけます。
ところが黒人は大学はおろか高校を中退している人も多いのです。これは余談ですが、黒人は大学に行く人の人数よりも刑務所に入る人数のほうがいまでも多いのです。
それは多くは歴史的に破壊された家庭環境のせいだと言えます。
長いあいだ奴隷としてあつかわれ、解放後は職をうばわれ、職にありついても家賃を払ったら残らないような低賃金の労働者として差別的な待遇をうけてきた黒人たちです。精神をずたずたにされたところからはじめなければならなかったわけで、傷と怨恨は深いのです。
黒人女性は好待遇を受けることもありますが、男性は差別や偏見をうけやすく、親が仕事をやめる、罪をおかす、自分が働かねばならない、どうせ努力しても何も変わらないのだと言う絶望、そんなこんなで高校を卒業するのもたいへんなことのようです。
ちなみに、女子高校生が絶望したときにやることは妊娠と出産です。動物的本能に近いものかもしれません。生きる意欲がわくのです。でも学校をやめてしまいます。

新移民が言語的なハンディをおっていて、高賃金の職を得られないのは仕方がないことです。
いつの時代も新しい移民は最低賃金から、必死で働いてきたのです。
(しかし韓国人などは、最初から店を買い、家を買い、子どもたちを大学院まで送る。最低賃金から、という苦労とはまた違ったやり方で必死で働いているように思います)
また新移民は、言葉、法律や文化のちがいから苦労が多い分、同胞コミュニティをつくって助け合う傾向があります。
しかしながら黒人は完全なアメリカ人です。差別や偏見にたいする政治的な組織はあっても、黒人経営の銀行やビジネスなどの互助組織はものすごくと言っていいくらい少ない。
彼らはどこか悪循環に陥っているところがあるように思います。
というか、アフリカンアメリカンのなかの格差も相当あるのです。
今では白人と黒人の格差より、黒人のなかのクラスの格差のほうが大きいのではないかと思われます。
かくして低所得層の黒人はつねに置いてきぼりにされているのです。

話が、横道にそれたりしましたが、ジョージアの話からアメリカの話をするとわかりやすいので、続けてみようと思います。
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by keiorihara | 2014-02-16 14:57 | USA | Trackback | Comments(4)
2012年 05月 31日

クイーンズって東京でいうと何区?  Sunnyside, Queens

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Street Fair on Greenpoint Avenue, Sunnyside

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Street Fair on Greenpoint Avenue, Sunnyside

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Sunnyside



コメントに、クイーンズって東京でいうと何区って感じですか?  という質問があり、うーん何区だろうとさんざん考えたのですが、何区のどこと何区のどこを足して、、、と思っても、やっぱり、ぜんぜんちがう。。。 似たとこなんてぜんぜんないのです。

都市の構造がぜんぜんちがっている。マンハッタンを除いて、金持ちは遠い遠い郊外に住んでいます。マンハッタンからたくさんの郊外急行路線が走っていて、それは、そこに住んで通勤している人でないかぎり絶対に乗らない電車なのです(つまり駅に自分の車が置いてないかぎり、電車を降りてもどこにも行きようがないからです)。また、クイーンズの先のロングアイランドには10の空港があります。自家用飛行機を持っていなければ使わない空港が10もある。
クイーンズには、よほど奥の方や歴史保存地区などに行かなければ金持ちはいないでしょう。多くの世帯は質素なたたずまいで、車はありますがどこの道にも無料駐車できる。しかし、どこよりも治安がよく、フツーで、便利です。

住んでいる人の構成がちがう。
ご存知のように、ニューヨークは移民の玄関港として都市が発展してきたところです。

クイーンズの人口は225万人(2011年)ですが、その約半数が外国生まれの人なんです。人口の半分が外国人というのはすごいですよね。そしてここでは、138の異なった言語が話されているそうです。
しかも、とくに中南米出身や中国や韓国や、、、インドやエジプトや、、、と書いていたらきりがありませんが、移民の多い国から来た人たちは、国別あるいは言語圏別移民たちで、自分たちのコミュニティをつくり助け合っている。
自分たちの銀行をつくり、学校をつくり、NPOの社会サービス組織をつくり、、、その中で行動するかぎりは英語が下手でも生活や商売ができたりします。
その中で生まれた2世は、生まれながらのアメリカ市民にもかかわらず、そういう家族や親戚に囲まれて育ち、多くの人は家族のなかでは母語を使っている。ネイティブ英語が聞こえてこないはずです。

ところで合衆国の、1960年から2008年までに流入した移民4000万人のうち、その半分が中南米出身のラティーノ=ラテンアメリカ系(ほとんどはメキシコ人などのスペイン語を話すヒスパニックだけれど、ハイチやブラジルなどの他言語圏を入れてラティーノという)。
多くが、けっきょくアメリカの帝国主義的介入によって、つまり戦争をさせたり、武器を独裁政権に渡したり、経済コントロールしたりして、追いつめられて国を出た人たちです。そしてアメリカは彼らを最低賃金労働者として必要として来たのです。
1970年代にはたったの4%だったラティーノですが、2050年には合衆国の3分の1の人口がラテンアメリカ系でしめられることになるといわれています。もちろん、NYはすでに3人に1人以上がヒスパニックですが。

そう思って写真を見ると、わかりやすいかもしれません。
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by keiorihara | 2012-05-31 10:29 | Queens | Trackback | Comments(1)