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折原恵のニューヨーク写真日記 - New York Photo Diary by Kei Orihara

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2018年 01月 04日

番外篇 * 愛しのシリア Syria1990 第4回

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グズグズしているうちに2018年の新年が明けてしまいました。そこにまたきな臭いニュース。
イラン各地で反政府デモが起きている、ということが、世界中のマスメディアでニュースになっています。
最初は百人ぐらいのデモだったのに、新年にはアメリカの大手TV、新聞では、トップニュースみたいな扱いで報じていました。

これにトランプ大統領がツイッターで反政府デモに支持を表明しました。
アメリカの民主党寄りの多くのメディアはいつもはとことんトランプを馬鹿にしたり無視したりしているのに、この件に関しては、なんの批判の口調もなく、トランプはイランの民主化を求める人びとにたいしてツイッターで賛辞を示した、という感じで報じています。軍需産業、石油産業の片棒をかつぐ点において民主党は共和党に負けず劣らずですから、これらのことがとてもきな臭いのです。

また、このデモが、ソーシャルネットワークから始まって、イランの数十の都市で同時発生的に起きたと報道されていることも、非常にきな臭いと感じます。
きょうは1月3日ですが(日本では4日)、かなりの規模に拡大していることが報じられています。
国連も、これを民主化運動と言ってまるでトランプのような支持の仕方、イランを独裁国呼ばわりしています。

前回、(つづく)と書いたときには、シリアのその後の歴史を書くつもりでしたが、こんなにシリアにこだわっているのは旅をした土地に対するわたしの個人的な思い入れもあるので、それよりも現在にかかわらなければいけないと思い書いています。

というか、わたしが言いたかったのは、シリアのこの悲惨な戦争が、CNN やBBCなど大手メディアをとおして世界中に喧伝されている”シリアの春”でも、独裁者アサドに対する”穏健な反体制運動”から始まったものでもなく、そして正義面していう”テロとの戦い”でもなかった。アメリカ+NATO陣営によるカタールからトルコに至る天然ガスのパイプラインのための戦争、つまり第二次大戦後からずっと続いている、石油戦争のひとつだったということ、それはCIAの工作によってつくられた理不尽な戦争だったとはっきりと認識しようということでした。
イラクでは大量破壊兵器、シリアでは化学兵器、イランでは核兵器の、所持や使用のウソの疑惑や恐れを毎日マスメディアで叫ばさせ、戦争を拡大、継続していく。おぞましい偽情報で人びとを撹乱してきたのです。それらを開発、製造、大量に所持して、世界中にばらまいているのはアメリカだというのに。

前回奇しくもイランという国名を出したのは、シリアで負けてしまった(アサド政権を倒せなかった)アメリカは、念願のイランに矛先を持っていくのだろうかと一瞬恐怖したからです。
だから、とつぜん起きた小規模のデモを、こんなに大きく報じて(少なくともアメリカでは)ハメネイの弾圧を強く印象させようというマスメディア(アメリカのマスメディアは完全に政府当局と同じ)の思惑が気になります。
もちろん、イランイスラム革命以降、イラン人の少なからずの人たちがある種の自由を束縛されてきた現実はあると思います。(自由を束縛されていない国民なんてほとんど世界にないはずですが。どういう統治体制で、どういう歴史的段階かということのちがいがあるだけで。)だから、デモが民衆に広がることは素晴らしいことじゃないかと思います。(現実的には、このデモは民主化を訴えているのではなく、失業などに苦しむ経済の問題を訴えているようですが)
しかし、アフガニスタン、イラク、リビア、そしてシリアと、ひとつの立派な独立国を欧米は、独裁政権だと勝手にでっちあげて(あるいは作り上げて)、反体制派にふんだんに武器や資金を投与して殺戮をし倒してしまう、その国の複雑な民族模様、宗教派閥などを、自分たちのやり方でとりあえず何とかまとめて頑張ってきた国を。そういうふうに繰り返されてきた卑怯極まりないやり方を、ついにイランに向かってやろうとしているのか、と怒りが沸き上がってきます。つまり、最初のデモそのものが、またもやフェイクなのだと思うから。

イランに関しては、願わくは武器を持った外人部隊がやってこないでほしい。そして、CIAがいつもやる手口、貧しい人々やリーダーにお金と武器をふんだんに与えて、生活を何とかしてくれと大統領に空手で訴えているデモを、”反乱軍”に仕立て上げるということをやらないでほしい。

しかし、今回は、イラン人の多くはもうすでにこれらの手口を知っているようです。
開戦の決定権をにぎっている最高権威ハメネイ師は、「イランの敵は、キャッシュ、武器、政治・情報組織を使って、イスラム共和国にトラブルを作り出す」と語っています。
また、穏健派(?)のロウハニ大統領は、「我々は自由の国にいて、市民の権利と体制を批判する、抗議を表明する自由をもっている」「しかし、暴力や私的財産を破壊する行為はゆるされない」と国民に訴えています。

アメリカのニュースで、キャスターが喋りながら流す写真が、2009年のイスラム主義保守派の大集会の写真だったりして、しかし、よーく見ないとただものすごい群衆としか見えません。えッデモはこんなに大きく膨らんでるの?と、私も一瞬思った。あらゆる面で、情報操作が行われています。

アメリカのAP通信やイギリスのロイターからの記事、CNNといった大手メディアから流されてくる情報はいつも斜めに読まなければいけないと思います。ことしも疲れる年がやってきそうです。


***
今回の1990年の写真は、シリア砂漠のオアシスの奥、キリストの生きていた時代に話されていたというアラム語が今も残っている村マアルーラーです。
キリスト教徒とイスラム教徒が交じり合って住む村で、壁が青く塗られている家は、メッカへの巡礼をすませた家の印だそうです。
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最後に。あるウェブサイトのコメントで、「シリア人は500万人以上も難民として国を出ているが、難民の中には相当数の若者がいるという、なぜこの国の男たちは自分の国をほっぽり出して戦わないのだ? イラク人は国のためにたくさん血を流したぞ」と。

これまでに書いたように、シリア人は誰もが知っていたのです。この戦争は自分たちの戦争ではないのだ。内戦ですらない、と。
自分たちと関係ないことでやっている戦争なのです。もちろん、逃げ遅れた人たちが30〜40万人も尊い命をうばわれているのですから、大変な犠牲を強いられました。国民の半数以上(!)が住む家を失い、故郷に戻っても瓦礫の町です。強烈で大量の武器のせいです。こんな戦争のために、若者は血を流してはいけないと思うのです。

(シリア番外篇おわり)







by keiorihara | 2018-01-04 07:13 | 番外篇


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