2016年 01月 30日
知人が西215丁目という、マンハッタンの北端のギャラリーで展覧会をしているというので見に行きました。 タイムズスクエアで、そこから北上する地下鉄に乗りかえてしばらくしたら、なんと137丁目で電車が止まってしまったのです。 「線路の故障でここから先きは行けない。全員Get Off !」 という、申しわけないなんて気持ちのかけらもない口調のアナウンスがあったっきり、何の代替策も言ってくれません。 こういうことは日常茶飯です。 みな、おとなしく下りていますが、どうするのでしょう。 わたしはもともとこの日は、見知らぬ地域を見る楽しみのために、この先でバスに乗り換えるつもりにしていたので、地下鉄から出て、地図で確かめていた一本東側のバス通りまで歩きました。 そこに現れたのがこの建物です。古い、というのか、ケバいというのか、こんな建物です。 これが、みんなの口からいちばん頻繁に聞かれる、”ニューヨーク市立大学”というもの、だったのです。 City University of New York 縮めてCUNY(キューニイと発音する)の本校です。(ちなみにニューヨーク州立大学はSUNYスーニイです) しかしぜんぜんイメージが違ったのでびっくりしました。 というのは、CUNYは学生数51万6千人、フルタイムの教職員数6700人、年間予算 30億ドルという巨大な大学です。 マンモス大学だろうからと、かってにモダンな高層ビルをイメージしていたのです。しかし構内を覗いてみると、超モダンもありましたが、同じデザインの古い建物が奥までずらーっと並んでいます。創立は1847年、確かに古い。 ここの他にハンターカレッジ、ブルックリンカレッジ、クイーンズカレッジ等々、26のカレッジと大学院で成り立っています。 アメリカの大学は授業料が確かに高い。しかし、ここは単位制だし、安い。また奨学金やさまざまな免除もあるようです。若い人たちは一度社会に出て、いろんな仕事をして、やりたいことを見つけ、それから大学に入学する人も多く、また、方向転換したり、子育てを終えて再入学する人たちも多くいます。 多くの州立大学、一般大学卒の人たちは、いろんな会社でインターンをやったり、パートタイムで働いたりしながら就職先を探すようです。大学生は、けっこう学業が忙しく、勉強しなければ卒業できないので、生活のためのバイトはしても、シュウカツをするような時間の余裕はなさそうです。 第一、一般的に大学卒業前に就職を決めている人なんて、ごくわずかのエリートたちだけではないでしょうか。まあふつうエリートは大学院まで行きますが。 アメリカには、アルバイトという言葉はありません。学生であろうとなかろうと、仕事はjob一つです。フルタイムとパートタイム、スタッフとフリーランスみたいなちがいはありますが、そこにはバイトという学生的就労のニュアンスはありません。(インターンという名のタダ働きもありますが。ちなみに友人の娘が4年生の夏休みにマイクロソフトにインターンにいったら1ヶ月40万円もらったそうなので、インターンといってもいろいろのようです) とにかく、生活のための仕事をしながら、本当にやりたいことを見つけ、それから大学院に行って専門職についた、という話はよく聞きます。 アメリカの大学と社会について思ったことですが、社会が専門職や、専門の勉強をした人を尊重する。 大学も、できるだけ細かく、専門の知識を与え、社会に役立てる人材を出そうとしていることです。 たとえば、州ごとに州立大学がたくさんありますが、そこには必ず社会福祉学部(social work)があり、たとえば児童虐待を専門に勉強した学生の多くは、卒業して州や市政府などの家庭児童局や民間の関連NPOで働きます。 日本のように児童相談所に配属になった行政職が、被虐待児に対応したり、家庭訪問するなどの貧しいサービスはありえません。絶対に専門家を必要とする仕事なのですから。 アメリカでは大学で気が変わって専門を変えることも、大学を変えることも、お金や時間を無駄にしない方法で自由にできます。 授業料は高いけど、入学金制度がないというのも、助かります。 大学どうしはもっと開かれています。教師どうしもオープンです。 大学に関しては書きたいことがたくさんあって、市立大学の話から外れてしまいました。 **** ニューヨーク写真日記は、著者がニューヨークを移転したため、次回をもってひとまずお休みさせていただきます。 本当は今回で終わりにすべきでしたが、昔書いていた中途の投稿を見つけ、つい更新に使ってしまいました。 とにかく写真が山のようにあって、この愛すべき過去をいったいどうしたらいいかと思ってしまう今日この頃。 #
by keiorihara
| 2016-01-30 23:12
| New York
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